昨日のBLOG

『X(エックス)の『BLUE BLOOD』はなぜあんなに音が悪く、名盤なのか』

https://www.edo-mae-recordings.com/blog/2019/6/4/x-blue-blood

は、すごいアクセス数でした。今日はその続きの『なぜ音が悪いのかpart2』を書こうと思ったのですが、かなり危険な内容な気がしましたので、あと10年ぐらいお待ちください。

さて、今日は真面目な話。

「マイクの吹かれを過度に嫌うエンジニアは美女に耳元で囁かれたことが無い悲しい男」。

そんな仮説を提唱する僕なのですが、実際マイクの吹かれに神経質なエンジニアやプロデューサーさんは本当に多いですね。特に日本人、その気質と思われます。

「大丈夫。吹かれてない?」
よく言われます。(笑)

そんなとき、『吹かれてるぐらいで丁度いいんすよ!』
と平気で言います。僕(笑)

これ絶対吹かれちゃ駄目なマイク!!リボン!!

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まず第一に僕が気がつかないわけはないんですよwww。
どんな些細なノイズやピッチのズレ等、気がつかないということはマズありません。

問題はむしろ、マイクの吹きが醸し出す音楽的魅力やリアリティに『皆が気がついて無い』ということにあるのです。

吹かれって基本的に低音で「ボフっ」ってなるんですが、そんなものは帯域コンプや波形処理でどうとでもなる。
吹いたから録り直しなどは完全にナンセンスなのは言うまでもありませんが、吹いてるからこそゾクって来ることもありますよ?

フランス語のシャンソンとかマイクに近接する程エロいです。リアリティ。
これはマイクに近接して収録するレコーディングだからこそ得られる、リアリティとはいえないでしょうか。
離れて鑑賞するライブでは得られないからこそ聴ける音楽表現。レコーディング作品の素晴らしさや録音の芸術がここにあります。



例えば、オーケストラのオンマイク収録。

好みの問題もありますが、指揮者が構えたであろう瞬間の奏者の身体の動きを衣装の衣擦れや呼吸音に感じる事が出来ますでしょう?今まさに迫真の演奏が始まるという気配。。。。

これがリアリティなのです。
リアルには本来客席ではそのような音はほとんど聴こえません。
しかし、それを捉える事が出来るオンマイク収録。

「リアルではなく"リアリティ"」

そんな感じでレコーディング現場のリアリティを一番伝えてくれる一つのエッセンスがマイクの吹かれだと思うんですわwwww

Gabrielle Aplin / Salvation

曲全体でマイクが吹かれまくっています。
それを気にならない程度まで丁寧に処理してあります。聴いてみてください。

マイクの近さから来る息づかいやLIPノイズまで含めた”リアリティ”が素晴らしいです。
ゾクゾクしますね。
それがアレンジや映像と相まって見事なアートに昇華しています。

この歌を吹かない距離で録ったら味気ないと思いますよ。。。。。
ここまでセクシーな録音はないです。
mixまで含め完全にコントロールされ尽くした曲。
この曲だけでなくこのCD『ENGLISH RAIN』全体が素晴らしい曲とサウンドに埋め尽くされています。


さて。

あとセクシーと言えばこれ。。。。

このCDはド頭歌い始めからいきなり吹いていてしかも全編に渡って吹いているんです(笑)。
※この曲は4曲目。

当時は沖縄民謡はおろか沖縄にも全く興味がなかったのですが、このCDはタワーの視聴機で聴いて一発でノックアウトされたものです。

『なんなんだこの近さとリアルさは!!そして声の説得力は。。。』

おじいちゃんに『マイク吹かないように注意して距離を保ってくださいね!』
なんて注意しても無駄だしナンセンス、って判断した現場の雰囲気がさらに音楽を深いモノにしている感じすらするんですよ(笑)。

このCDをきっかけにして音楽以上に沖縄そのものに傾倒していく事になる私。
『録音状態の如何』にはそういうパワーすらあるんですね。