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マイク

ラインケーブルの長さによる音の劣化を証明しました!

過日、江戸前レコーディングスにて行った面白い実験の結果をお知らせしましょう。

レコーディングの音質は常々ケーブルの長さで音が変わる、鮮度が落ちる、アタックがぼやけ音が遠くなる等々申してる江戸前ですが、それは本当なのか?というのを実験してみました。

まずは音源をお聴き頂きたいのですが、収録済のDrトラックからスネアとキックだけをモノラルで抜き出し、protoolsの192/ioよりアナログで出力、そのままアナログでinput に戻し再録音してスペクトルを比べる、というものです。(ピークを検出する方法にて)

 

sound[1]は1.5mのアウトのd-subケーブルからインの1.5mのd-subケーブル(オヤイデ製)にそのまま戻したもの。
sound[2]はその途中に5mのベルデン8412を12本継ぎ足し、合計63mのケーブルを通し戻したものです。
(勿論同じout1とin1を使用し、繋ぎ変えて収録しました)

音を聴きますと63mの長さを通した音の方がぼやけているように聞こえますよね。

スペクトル(周波数特性)も見てみましょう。

3mのマイクケーブルのスペクトル

3mのマイクケーブルのスペクトル

63mのマイクケーブルのスペクトル

63mのマイクケーブルのスペクトル

両方を重ねてみた

両方を重ねてみた

サァどうでしょう!なんと63mでは500hz以下が軒並み5dB程落ちています。
また、なぜか1khz周辺が2~3dB増えていて、その先3khzあたりから先の高域がまんべんなく最大5dB程度落ちていますね!

いいですか?
みなさんEQとかよく触るとは思いますが、5dBって相当ですよ?ご存知ですよね?
ipodやiphoneのイコライザーだと、そうとうグイっと上げる感じが5dBです。
とんでもない量です。

太さやコシに関わるmid~lowが痩せまくって、『ヌケ』の高域もどっか行っちゃってます。
つまりいちばん『音の ”悪さ” に貢献する』1khz当たりが相対的にかなり増幅されていて、『かなり音が悪くなっている』のです。

しかも63mのほうは明らかにhiエンド・lowエンドがガクンと落ちているのが判ります。
つまりスペクトルだけ見ても、結果明らかに音が痩せてしまっていると言う事がお判りになるかと思います。
実際両方の音をセンターで同時に出し、片方を逆相にしてみましても、完全に音は消えませんでした。


63mといいますと極端な長さではありますが、ケーブルというのはこのように長くなればなるほど音が悪くなるという事なのです。3mと比べて10mだとしても、また様々な接続ルートの合計の場合でも同じです。(しかも半田の接点が多くなることでも劣化します。)

今回提示した結果だけでは『アタックがなまる』ことについては証明できませんが、音を聴くとそれもまたお判りになるでしょう。

例えばライブアルバムがやたら音が細い理由はコレです。

63メートルというとかなり長いと思うかもしれませんが、
商業用のいわゆる”カッコイイよくて大きいおしゃれな”
『THE RECORDING STUDIO』なんて何十メートルも実際ケーブルを引き回しているものです。
エンジニアのいるコントロールルームから見てドラムセットはずいぶんあっち側だったりします。
macやインターフェースを置いているマシンルームは一体どこですか?隣の部屋だったりします!?

江戸前ではマイクからマイクプリまではたったの5m、その先192/ioまでは1.5mの合計6.5メートルで生ドラムを収録しています。一般的なレコーディングスタジオの大体半分以下です。
使ってるケーブルもベルデンの8412という高品位なモノで、1.5mの192/ioまでのd-subケーブルはオヤイデ製。
※ケーブルの型番についてはだめ押しで言ってるだけで、別にカナレでもmogamiでもなんでもいいんです。
ここで言いたいのはケーブルの『長さ』。


マイクだのマイクプリだのコンプだのプラグインだの録音フォーマットだの何bitだの192kだの言う前にもっと、大事なことがある事をここで声を大きくして言いたいのです。



江戸前のレコーディングの音の良さ、
『太い、リアリティーが有る、実在感がある、空気感に溢れている』
の究極的要因はこれかと思っています。


ところでこの実験、やってみて実は僕的には『思ったほどそこまで極端な差がない』という意外な結果でした(笑)
自分で擁護するわけではありませんが、今回は『ラインレベル』での実験だったからなのでは?という疑念があります。経験上マイクレベル(ラインレベルよりケーブルを流れる電気が小さい)でのレコーディングではもっと音の差を実感しますので。(もちろんギターのアンプまでのシールドの長さも同じことですよ。しかもギターから出る信号レベルはとても小さい。エフェクターをたくさん繋ぐ事しかり)
 

次回は時間がある時是非『マイクレベル』の信号で同じように実験してみたいとおもいます。

まったく音とは厄介なモノですわ。。。。

SM57が如何に神マイクか語るスレ part666

SM57。それは誰もが憧れない・どこにでもある・非常に安いマイク。
しかし!どんなレコーディングスタジオにも最低5本はあり、どんなレコーディングエンジニアでも一様に素晴らしいと評価する神マイクなのです。
某レコーディング専門誌で『無人島に1本持って行くならどのマイクか?』で、堂々1位!!!

タフで過酷な環境でもバッチリ使えそう!なんてことではなく、本当に1番汎用性が高いからなんです。


私は良く言うんです。『国会からメタリカまで』と!『すげー(S)マイク(M)57!!』と。。。。


実際日本の国会含めアメリカのトランプさんの会見とかでも映ってますよ。(アメリカは先進国なのでBETA 57)
ジェイムス・ヘッドフィールドのvocalは毎回これらしいですし、U2のボノはこれをハンドマイクで使うそうです。※もちろんレコーディングでの話。


とにかくこれだけは言えます!このSM57、何のレコーディングにでも使えます。


ギターアンプ、ベーアン、アコギ、スネア、タム、ボーカル、バイオリン、チェロ、バグパイプ、チューバ、オンドマルトノ、テルミン、大正琴、琵琶、カスタネット、彼女のあえぎ声、小鳥の囁き、大本営発表、玉音放送。。。。。。

特性としては決して広くないのですが、美味しいところが実に良く拾える。

本当に神ですね。しかもどこにでもあるし何でも録れるのでまぁ『八百万の神』とでも言いましょうか?

もちろんコレ2本とkickのマイクに何か立てれば、『技術のあるレコーディングエンジニアさん』
なら、ドラムセットでもそりゃあもう完璧。別にレコスタに入るまでもないんです。ドラムなんてどこでも録れるんですよ!
※いつもと言ってること矛盾wwww

『そうSM57ならね!』

それではここで、SM57をtopマイクに2本立て、kickにのみコンデンサーを補強で立てた場合の、
『マイク3本だけによる秀逸なレコーディングドラムサウンド』を御聞きください。
※kickにはLEWITT DTP 640 REXを使用。
 

はい、すいません、今回は話の趣旨としてはkickにも57で行くべきなんですが、57でも駄目なモノはあるんです。

KICK、、、、これだけは無理、SM57じゃ駄目………本当にSM57で録るkickだけは
『LOWが無いです!!!』。
試す価値なし(もちろんわざと使うのはあり!!!)

※しかしさんざん褒めておいて最後は落として終わるという。。。。

俺はSMでいうと
ドSかもな。

 

ちなみについでにこの神田リョウさんの映像の1:05からの音源のtopマイクはSM57です。ご参考まで。

マイキングの初歩の初歩の音響学。

マイキング、それは非常に難しいテーマ。
録音・レコーディングスタジオ界隈のシステムで最も進化のない『マイク』。
それにまつわる話ですが、全くミステリアスな事ばかりです。

twitter等を見ておりましても、プラグインがあーだソフトがこーだなどとは良くみますが、
マイキングについてのお話はあまり盛り上がる事はない気がします。
それはやはりルームアコースティクスや位相に関わることなので、とてもとっつきにくくわかりにくいからなのでしょう。

今回はそのマイキングについて、音響学的な立場からの論点も含め、短い時間ではありますが、深く考察してゆく事にしましょ. . . . . . . . . . . . . . . . . . .なんてことじゃなくて、
(マイキングは自分でなんとかせいゃwww)
こんなこともありますよ。ってはなし。

だいたいマイクってのは意外とエンジニア目線というか、エンジニア都合で行われますね。
『ここが音がいいんだよ。ここだとかぶりが少なくていいんだよ。』的な
確かに重要なポイントですね。

大昔とある沖縄民謡関係のレコーディングをさせて頂いた時に、年配の奏者兼唄者の方に、
『なんかマイクが近いと意識しちゃって伸び伸びとうたえないなぁ』
と、仰せつかりました。

同室で笛や琴やタイコまで1発の収録だったもので、なるべくかぶりを減らしたく思うのはエンジニアの性。
だから譜面台だけはちゃんと見える程度に、マイクをなるべく近づけてセッティングしていたのです。
そうしたらどうも歌いにくいとの事。もちろん顔にべったりくっつけてセッティングしているわけではないのですが。

mixでも気がついたのですが、マイクが近くて気になってた時と離して意識しなくなってからの唄では、
その音楽的表情が全くちがうのです。
よりいきいきしてるように感じられるのです。

マイクを離した結果、唄は伸び伸びとさらにいい感じになり、声も出て結局カブリの問題も声が大きくなる事で相対的に良くなったという。。。

マイキングも何事もエンジニア的な理論的な決め付けだけで行うのは駄目なのだなぁと。
音楽を作ってる訳だから、ミュージシャンの方々に『いかに気持ちよくいい演奏をして頂けるか』
という、なによりも一番大切なことを忘れてはいけないのだと若い僕は反省したお話なのでした。

これはロックとかのレコーディングにも言えます。いつもみたいにハンドマイクで歌いたいんだよっていわれたら躊躇せず58をお渡しする、コンデンサーマイクが立ってると緊張するからと言うなら、近くにダミーで58を立てておいて、遠くから狙う等々。エンジニアの『仕事』はいくらでもあるものです。

こういうメンタルな部分が一番マイキングでは難しい、いやレコーディングでの一番大切な部分なのです。
 

秋も深まりきりましたね。model RACCO、photo by EDo-mae (fujifilm X-T1、nikkor micro 55mm f2.8)

秋も深まりきりましたね。model RACCO、photo by EDo-mae (fujifilm X-T1、nikkor micro 55mm f2.8)