サイン波っていうのがありますね。
一つの波だけで出来たピーって音が。あの音からは音程を感じることができます。ドレミ的な。
ではあのピーの音と同じ音程であるけどもピーじゃない音色、ピアノだったりバイオリンだったりギターだったり声だったり。
何が違うとそう感じるのでしょう?
それは「倍音」構成です。
倍音とは元のピーにたいしてどんな音程の違うピーが重なってるかってことです。簡単にいうと。
その倍音の重なり方の違いが音色になるんですね。
(音色というものには、そのほかにも時系列による重なり方の遷移や、音の出た瞬間のそのアタックの出方などたくさんの要素が絡みますが、割愛)
倍音の重なり方の個性だったりピークをフォルマントと言ったりします。この分布の違いが例えば人の声質の違いになるわけですが。
つまり、倍音がどう出てるかでいい音に聞こえたり悪い音に聞こえたりするわけです。
ギターのディストーションも倍音の強烈な付加の結果です。
ポーンって音がビョーンって変化するわけですよ。エフェクターやアンプの電気回路に負荷を掛けて「発振」させてるわけです。わざと。それが美しくなるように設計されてる。
ギターの弦やベースの弦の種類の違いも倍音の違い。ドラムのヘッドでもコーテッドの音とクリアやCS(コントロールドサウンド、まさにその意味!)の音の違いも結局は倍音の違い。それをさらにチューニングでコントロールします。
スネアならスナッピーが倍音の強烈な付加を手伝ったりします。
シンバルなんてのはもう基音がなんなのかわからないくらい、音程を感じないくらいのランダムな倍音の集合体なわけです。つまり基音が少ないからシンバルには殆どキーという概念がないわけですね。スネアやタムはもう少し音程を感じる事ができますが。(チューニングによる)
このように世の中の楽音は全て基音と倍音のバランスによって成り立つと言えます。
江戸前ではよく「スタジオのビンテージ機材による音色感はドラムのチョイスやチューニングで出せる」と言ってきました。
それはつまり楽器側の倍音コントロールで結局は似たことが出来る、という意味なんですね。
EQはわかりやすく倍音をいじるものなのはお分かりでしょう。コンプも時系列に対し倍音をコントロールするものと言えます。(また、単純にその回路により独特の倍音が付加されるのもある)
NEVEやSSLなどのマイクプリの個性云々、それらを通すとシルキーになるとか太くなるなんていい方も倍音がどう負荷されるかって事です。
スタジオのレコーディング機材にも種類があり、音を変えないほうがいいという考えで作った機材もありますし、音をいかに美しく変えるか?をコンセプトにした機材もある。当初の設計のコンセプトは違ったけども、音を突っ込んだらいい倍音がたまたま出たことが個性になっている機材もある。
学校の体育館での朝会のマイクの割れなんてのもきっとどっかでツマミを上げすぎてるわけですよ。ギターの最初期の歪みもそういう意図せず歪んだらかっこよかった、というやつのはずです。それが歪ませるのを目的とした機材の登場につながっていくわけです。
ツマミを上げた時にどう音楽的に割れてくれるか、つまり歪んでくれるか?
その倍音の付加具合がその機材の音色的な個性になります。
けど、ドラムやギターに例えるとチューニングやエフェクターによって程よく倍音を付加してあって既にいい音色になってるのに、二重でレコーディング機材でそれをまた増やしたりすることも起こり得ます。それは結局音を限度を超えていじってしまい崩壊させる結果になる場合も多々あるのです。
なので、この機材だからなんでも使える。やっぱ◯◯だからいい音だ!というのは、レコーディング全体の音のプロセスから言うとそんな大きな割合の話しではない可能性があります。
同じ機材を使ってもいい音をにもなれば悪くもなる。
同じ太鼓やシンバルでもいい音にもなれば不快にもなる。
これは全て前後のプロセスとの相性、ミュージシャンなら演奏そのものの身体の使い方や力加減の個性だったりとの相性です。
そもそも自分の演奏における音色の個性と楽器や機材の音色の個性がマッチするかしないか。
そういうのを客観視できる耳や感性をもっと持つといいのかもしれません。
レコーディング機材だけでなく、ドラムもギターもベースも機材という機材全部に言える。
これはレコーディングにとって最も大切なことです。
ドラムに関しては僕はそういう聴き方しかしてない、いや、そういう聴き方しか出来ないと言っても過言じゃないかもしれませんがねー(笑)